福建省からの華僑が築いた「慶福宮」。広東系の廟より福建系のほうが、控えめな色合い。 |
ヤンゴンのチャイナタウンで人気の観光スポットのひとつが、「廟」です。
(東南アジアのチャイナタウンなら大抵そうなのもしれませんが)ここの廟は主に、広東省出身者が建てた廟と、福建省出身者が建てた廟の2種類にわけられます。
ヤンゴンにある3大廟の内訳。建立年は右から観音古廟(1823)、慶福宮(1861)、龍山堂(1875) |
廟では、仏教や道教等の神様どれかではなく、祖先や民間信仰の神様を一緒に祀っていて、自分たちが信じている神様まとめてぜんぶ、という印象です。
中国では明朝末期、3教混合(儒教、道教、仏教)の信仰が民間に信仰していったそう。華僑もその流れをくんでか、ヤンゴンにある廟でも3教混合の神が祀られています。
慶福宮の内部。写真中央奥に祀られるのが媽祖 |
3大廟(1)Kheng Hock Keong 慶福宮
3大廟の中でも特に有名なのが「Kheng Hock Keong(慶福宮)」。南北に伸びるシンオーダン通りが、ヤンゴン川に沿って伸びるストランド通り(ミャンマー語ではカンナーラン)に突き当たる位置にあります。
資料によれば、植民地時代にはここに華人専用の埠頭があり、中国からの帆船が出入りしていたとのこと。商業・交易を生業としていた福建人は、埠頭のそばに廟を建て、媽祖(航海の神)を中心とした神々を祀りました。
慶福宮には媽祖以外にも、保全大帝(健康・長寿の神)や山西夫子(商業・職業の神)、土地神や八神など様々な神がおられます。
華僑の廟に祀られている神様は本当に多種多様!しかも同じ神様でも複数の呼び方(名前)があるんです。調べればいろんな神話や逸話が出て来て面白いんですが、キリがない…
私がここで気になったのは、中央に祀られた媽祖の祭卓下にひっそりとあった神様です。そばにいた地元の方が指差しで教えてくれ、「ホウヤーゴン」というのだそう。虎の置物と石彫りの虎(だと思う)像が、しゃがんで覗き込まないと見えない位置に祀られていました。
これ。 |
虎は、ここに限らず各廟で目にします。気になって調べてみたら、中国文化研究者の川野先生とい方が、廟の虎について詳しく書いたブログを発見!
台湾と福建系華人の虎爺(虎爺の話その2)
─虎爺を巡る民間信仰 (台南城隍廟とシンガポール大伯公廟
ブログ「アジアの街並−東南アジア旧市街・中国古鎮・日本昔町ー川野明正の研究室」より
川野先生によると、台湾や福建系華人の民間信仰では、“虎は神様に帰依して神使いとなることも”あり、台湾では虎は、土地神・山神の乗騎なのだそうです。また、ときには財神であり、子供の守り神でもあると。
虎ひとつとっても、実に様々な神となるのですね。とても興味深いです。きっとこの慶福宮にいた「ホウヤーゴン」も、このどれかの神様なんだと思います。
*追記 2019/7/11
川野先生によると、虎爺公(虎の神、中国語読み:フーイエゴン)のことを、福建南部方言ではホーヤーゴンと言うのだそうです。スッキリしました!
「龍山堂」の入り口で見かけた虎の彫刻 |
「観音古廟」の神様とともに祀られた虎。 |
ちなみに上の観音古廟の写真、4年前くらいに撮影したのですが、先日再訪してみたら、
塗り直されていました!
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ヤンゴン中華街を歩こう[1]チャイナタウンってどんなとこ?
ヤンゴン慶福宮の記事、興味深く拝見いたしました。また、わたくしの記事を取り上げていただき、ありがとうございます。虎爺は、台湾では専門の研究書も出ておりますが、詳細はメールで講義資料を添付致しましてお返事致しました。宜しく御過目くださいませ。
返信削除川野先生、コメントくださり感激です!先生のブログと送ってくださった資料は、今後のヤンゴン中華街散策を何倍も楽しくしてくれる情報満載です。一つ一つ、じっくり読みたいと思います。本当にありがとうございます。
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